報告

第29回全国小さくても輝く自治体フォーラムin泰阜村 参加者アピール

2025年5月16日

現在、世界では新たな戦争による災禍が続くなかで、米国トランプ政権の関税政策が世界経済の減退や分断につながることが懸念されています。

日本では、インフレ・物価高と雇用での人材不足が地域経済と住民生活に厳しい影響をもたらしています。また、インフラの老朽化対策とともに災害リスクへの対応も焦眉の課題です。自治体には、これからも地域経済と住民生活を守り、地域社会を維持していく要としての役割を積極的に発揮していくことが求められています。

令和7年(2025年)の初夏、長野県の南部に位置する泰阜村に集いました。泰阜村は人口約1400人の過疎の山村ですが、この約40年の間、在宅福祉と山村留学に積極的に取り組んできました。泰阜村は、「社会の発展、村の発展に尽くした高齢者に、幸せな老後と最後を提供するのは、行政の責任・使命(村の責任)である」として、在宅福祉の独自施策を進め、高齢化のピークを乗り越えてきました。村の方言で、人を育てることを「ひとねる」といいます。村役場とNPO法人が連携した山村留学をはじめ、自然とのふれあいと歴史文化を尊ぶ教育も進めてきました。また、地域資源を活かして新たな価値を創出し、産業を興していく取組みとして、南信州の企業と地元農家が設立した農業法人による新たな農業の展開やジビエの活用なども進めています。

今回のフォーラムでは、こうした泰阜村の村づくりをはじめ、南信州を中心とした長野県内の様々な取組みなどから学ぶとともに、記念講演では、農山村と都市の“対流=行き来する”「田園回帰時代」における共感を活かした農山村再生のあり方について考えました。3つの分科会では、それぞれ「鳥獣害対策とジビエ活用の両立と課題」、「在宅福祉先進地から語る地域福祉医療の現在地」および「創意工夫と広域連携による移住定住の推進」というテーマで学習と交流を深めました。また、シンポジウムでは「自然を活かした教育・保育が『ひとねる』未来」をテーマとして、人と自然が混じり合う暮らしがこどもたちのねっこを育て、未来を切り拓く人が育っていく展望を語り合い、学び合いました。

政府において地方創生2.0が打ち出され、予算が拡充されたことは歓迎すべきこととおもわれますが、これまでの地方創生政策の10年間でむしろ少子化が加速し、インフレのもとで地域が疲弊していることに鑑みれば、国の政策・施策に自治体が乗っかれば良くなるものではありませんでした。小規模自治体は時代の最先端であり、人口減少、少子高齢化、インフラ維持などの課題に直面しながら、その解決に取り組み実績を残してきました。新型コロナ禍においても、その優位性を発揮しました。今日、世界情勢や内政の激動期において、「ケアに満ちた地方自治」、「まなびあい、育ち合う、ひとねる地方自治」を体現し、都市とも連携しながら、内発的で創造的な地域づくりを進める小規模自治体の価値をいっそう発揮すべく、取り組んでいきます。

令和7年(2025年)5月16日